一食で1日の1/3の栄養素が摂取できる完全食。それだけで生活できたらいいなと思ったことはありますか?完全食だけで生活ができれば、食事時間の短縮や献立を迷う必要がなくなりますよね。買い物も家のネット注文だけで完結します。
結論から言うと、完全食のHuelだけで生活している人はいます。しかし一般の人が真似をして、健康被害がでないかというとそうとは言い切れないのが現状です。
今回は、完全食やHuelだけで生活できるのかやメリットデメリットを解説します。
完全食のHuelとは?
完全食のHuelは、粉末タイプと液状タイプの完全栄養食です。Huelは動物や環境への影響を最小限に抑えた便利でリーズナブルな完全食をモットーに、100%ビーガン、サステナブルへの取り組みも重視しています。
粉末タイプはパウダーとブラックエディションの2種類、ドリンクタイプは開けたらすぐに飲めるボトルが1種類あります。
パウダー | Huelブラックエディション | Huelボトルドリンク | Huel|
1食あたりのカロリー | 400kcal/95g | 400kcal/95g | 400kcal/500ml |
タンパク質 | 30g | 40g | 20g |
脂質 | 12g | 18g | 19g |
フレーバー | 7種類 | 7種類 | 3種類 |
(通常購入) | 400kcalあたりの値段294円 | 319円 | 613円 |
パウダーは、26種類のビタミン&ミネラルが配合されています。ブラックエディションは、パウダーよりも炭水化物が50%OFFでタンパク質が33%増量されているのが特徴です。ブラックエディションは人工甘味料が不使用でグルテンフリーです。パウダーと同じカロリーですが、高たんぱくな食事を摂りたい人や糖質制限をしている人に向いています。
割高になりますが、ボトルタイプは専用容器に入っていて溶かす必要がないので、食事の効率を最小限に抑えたい人には特におすすめです。自宅以外の職場なのでHuelを利用したい人にはすぐに飲めていいですね。仕事が忙しくても昼食の時間が無くても、このボトルならサッと済ませることができます。
Huelは1日どれくらい摂れば良いの?
Huelを1日どれくらいの量を摂取すれば栄養素が足りるのでしょうか?日本の栄養ガイドラインは、2200kcal/日となっています。Huelは1食95gが推奨量とされていて、400kcalになります。そのため推奨量を5食摂取してもエネルギーが微妙に足りません。また、炭水化物も不足します。
Huelパウダー バニラ味
1食95gあたり | 2000kcalあたり換算量 | 日本のガイドラインと比較した1日の充足率(%) | |
エネルギー | 400kcal | ― | 91% |
タンパク質 | 30g | 150g | 185% |
脂質 | 13g | 66g | 106% |
コレステロール | 0mg | 0mg | ― |
炭水化物 | 42g | 211g | 66% |
糖質 | 38g | 192g | ― |
糖分 | 2g | 8g | ― |
食物繊維 | 4g | 19g | 100% |
食塩相当量 | 0.7 | 3.3g | 46% |
ビタミンミネラル | 100%未満なし |
さらに1日5食Huelを摂取するのは、なかなか大変です。飽きてしまうなどのストレスにより、3食に減らした場合、さらにエネルギー摂取量が減ってしまいます。このように完全食にはわざとエネルギーを少なく設定している商品があります。カロリー不足にならないように注意が必要です。
1食400kcalに不満を感じている人もいるようです。1日5回Huelを飲むのは、厳しいでしょう。
私自身もHuelに挑戦してみましたが、1日1食の置き換えが精一杯でした。腹持ちは良いですが、咀嚼しないので、なんだか物足りない気持ちでした。
Huelだけで生活できるの?
一日に必要な必須栄養素が摂取できる完全食ですが、それだけを食べ続けて生活ができるのでしょうか?実際に、Huelだけを食べ、生活している人もいます。完全食やHuelだけでの生活は誰でも可能なのでしょうか?
ここからは、完全食生活を6年間続けている笠原元輝さんについて紹介します。ABAMATVで特集されました。現在は1日2回、ドリンクタイプの完全食とプロテインを混ぜたものを摂取しています。これで一日に必要な栄養素が摂取でき、食事時間はわずか20秒。
1日2回の液体摂取だけで空腹が満たされるのか疑問ですが、1食で約200〜300mlの液体を摂取しているので、腹持ちは良いそうです。満腹感も得られ、美味しいから全く飽きないと語っていました。
3回の食事を2回に減らし、量も変えていないので、摂取カロリーは減っているそうです。摂取カロリーは基礎代謝ギリギリだが、今はまだ大丈夫だと本人は言っています。健康診断の結果は、中性脂肪が低値でC判定のみ。他は異常ないそうです。ただあくまでも彼の健康診断の結果ですので、自分に当てはめて考えるのは危険です。
笠原さんはもともと食事に対するモチベーションは低く、やりたいことがあれば飲食を忘れて没頭するタイプの人。コンフレークよりも手軽な物を探していたところ、もっと時短になる完全食に出会ったそうです。
食事を楽しむよりも効率を優先したい人にとっては、完全食だけの生活は魅力的ですね。完全食だけの生活はメリットもありますが、デメリットもあります。まずは、メリットを紹介します。
Huelなどの完全食だけで生活するメリット4つ
Huelなどの完全食だけで生活するメリットは、食事時間の短縮など4つあります。
- 食事時間の短縮
- 栄養バランスを管理しやすい
- 外食より経済的
- 非常食としてローリングストックができる
1.食事時間の短縮ができる
毎日の食事を何にしようかと考えたり、調理して食べると時間がかかりますよね。Huelは粉を計量して水などに溶かすだけ、液体タイプはボトルのふたを開けるだけ、誰でも簡単にできます。

完全食には、食事タイプやおやつタイプもありますが、いずれも通常の食事と比べると手間がかからないものが多いです。「食事の時間がムダ」「効率よく食事をしたい」「食べるよりも優先したいことがある」という考えの人に、完全食はマッチするようです。
2.栄養バランスを管理しやすい
完全食は、1食で1日の1/3の必須栄養素が摂取できる食事です。普段の食事で偏りがちな栄養素もバランスよく摂取することができます。またカロリー調整もしやすいので、ダイエットをしている人にもおすすめです。
3.外食より経済的
完全食は1食500円以下の商品が多いです。Huelもボトルタイプは少し割高ですが、粉末タイプは一食300円前後と安価です。コンビニでお弁当を買ったり、外食やデリバリーを利用している人にとっては、栄養バランスがとれて食事代が安く済むのでコスパが良いですよ。
4.非常食としての価値あり
完全食は賞味期限の長い商品が多いです。Huelの粉末タイプは、未開封で12ヵ月、開封後もきちんと保管していれば6ヵ月です。完全食には3年もつものもあるので、いざという時に使用できますよ。ベースブレッドの賞味期限は1ヵ月ほどなので、ローリングストックをすると非常食として活用できます。

Huelなどの完全食だけで生活するデメリット4つ
必須栄養素の摂取としては完璧な完全食ですが、それだけで生活するとどのようなデメリットが生じるのでしょうか?また、Huelだけで生活するデメリットはあるのでしょうか?
Huelなどの完全食だけで生活するデメリットは、摂取カロリーが不足するなど4つあります。
- 摂取カロリーが不足する
- 咀嚼回数が減ることによる弊害
- 食事の楽しみが減る
- 他者とのコミュニケーションの機会が減る
1.摂取カロリーが不足する
完全食なので規定量を摂取すれば、必要な栄養素は足ります。しかし、脂質や糖質をあえて減らしている商品もあり、カロリーが不足する可能性があります。
活動量が多い人や体の状態により消費カロリーもひとそれぞれです。カロリー不足が続くと、肉体的にも精神的にも悪影響を及ぼすので、自分の体調を見ながら利用するのが良いでしょう。
2.咀嚼回数が減ることによる弊害
とくにドリンクタイプの完全食だけを摂取し続けると、噛む回数が減り、あごの筋力が衰えます。見た目の印象が変わってしまうこともあるそうです。また、噛むことにより、脳の活性化にもつながるので、記憶などの脳の機能低下につながることもあります。
「一口で30回噛む」と昔はよく言われたものです。噛むことで唾液が出て、虫歯や歯周病の予防にもなります。唾液には消化酵素が含まれているので、消化を助けてくれ、栄養の吸収も良くなるんですよ。噛むことの大切さを改めて感じました。
口コミを見ると顎の衰えが気になる人が多くいました。他の食事では固いものや食物繊維の多いものを食べたり、ガムを噛んで鍛えたりして、対策をしているようです。
3.食事の楽しみが減る
完全食だけの生活を続けると、食事の楽しみが減ってしまいます。メニューや食材の変化がなくなり、食事が単調になります。食事の効率化を考えて省きたいと考えている人にとってはメリットかもしれませんが、毎日の食事に楽しさを見いだせなくなり、飽きてしまう人が多いのも現状です。
4.他者とのコミュニケーションの機会が減る
食事の時間は、他者とコミュニケーションをとる貴重な機会です。先ほど紹介した笠原さんは、自分が食べ終わってもパートナーが食事している間は一緒におしゃべりすると言っていました。結婚する前はデートでは外食していたそうです。完全食も臨機応変に上手に付き合うのが継続する秘訣なんですね。

Huelだけで生活する注意点4つ
完全食Huelだけで生活する注意点はエビデンスが無いなど4つあります。
- エビデンスがないことを理解する
- 消化吸収能力は個人差がある
- 咀嚼回数の減少による見た目の変化に注意
- 食事の楽しみやコミュニケーションの機会の減少に気をつける
エビデンスが無いことを理解する
完全栄養食は誕生してからまだ日が浅いです。2013年にアメリカ人のロブ・ラインハートが「ソイレント」を開発したのが始まりだと言われています。
年月が経ってから現れる影響は、まだ未知数です。完全食だけの生活は今後どのような影響をもたらすか分からないという点を理解して利用することが大切です。
また、日本人の食事摂取基準を満たしている完全食ですが、記載されていない栄養素や成分はどうでしょうか?腸内環境を整えるプロバイオティクスは摂れるのか?添加物の過剰摂取の危険はあるのでしょうか?
Huelはコンブチャやプロバイオティクスが入っているので、腸内環境を整えたり、免疫機能も考えられて作られています。また、Huel ブラックエディションは、人工甘味料や添加物を一切使用していません。添加物の過剰摂取が気になる場合にもおすすめです。
同じ商品を食べ続けると、どうしても特定の添加物や成分を知らぬ間に摂り続けてしまいます。完全食にはいろんな種類が販売されているので、複数の商品をサイクル化するのが良さそうですね。味の飽き防止にも繋がりますよ。
消化吸収能力には個人差がある
同じ食品を同じだけ摂取しても栄養が吸収される能力には、個人差があります。もちろん活動量などの食事以外の影響も受けます。
咀嚼回数の減少により、消化酵素の分泌不足も考えられます。完全食の推奨量を摂取しているから大丈夫と安心せず、自分の体調を見ながら取り入れましょう。食事回数や量を安易に減らすのは危険です。
咀嚼回数の減少による見た目の変化に気を付ける
Huelなどの液体タイプの完全食は、咀嚼回数が減少します。その結果、顎の筋力が低下し、見た目に変化が現れます。
デメリットでもお伝えしましたが、咀嚼することにより脳が活性化するなど咀嚼にはメリットがたくさんあります。食事タイプの完全食もありますが、管理栄養士としては、普段の食事の置き換えとして1食または2食程度の置き換えをおすすめします。
食事の楽しさやコミュニケーションの機会の減少に気を付ける
こちらもデメリットと重複しますが、食事は栄養素を摂取するだけの行動ではありません。家族や友人と楽しく食事をしたり、美味しいものを食べると心も体も満たされますよね。これらより食事の効率を優先する考えの人は別ですが、完全食だけで生活するのは、多くの人には難しいのが現状です。
まとめ
完全食やHuelだけで生活できるかについて解説してきました。栄養摂取として考えると可能ではありますが、心の栄養や身体機能の面からは現実的には難しいです。
完全食だけで生活するメリット
- 食事時間の短縮
- 栄養バランスを管理しやすい
- 経済的
- 非常食としてローリングストックができる
完全食だけで生活するデメリット
- 摂取カロリーが不足する
- 咀嚼回数が減ることによる弊害
- 食事の楽しみが減る
- 他者とのコミュニケーションの機会が減る
以上の点を踏まえると、完全食やHuelだけで生活するというのは、可能ではあるがおすすめはできません。食事回数を減らしたり、一食の量を減らすことによりエネルギー摂取量が減る恐れがあるからです。
身体や精神面から考えると、完全食だけでの生活ではなく1食や2食の置き換えとして取り入れてみてはいかがでしょうか。また、完全食には種類があるので、咀嚼をする必要がある商品とドリンクタイプを組み合わせて、健康的な生活を送れると良いですね。