牛乳は離乳食として生後7ヶ月ごろの赤ちゃんの頃から大人・高齢者に至るまで、幅広い年代で最も親しまれている食品の一つ。
給食にも定番で出されるほど栄養豊富な食品として知られている牛乳ですが、ここ数年「牛乳を飲む量が減っている」「牛乳嫌いが増えている」などと言われます。
実は、2021年に実施した牛乳の飲用についての調査によると、牛乳は栄養・健康・おいしさを理由に、今も昔と変わらずに8割弱の人が飲み続けています。そのうち35%は毎日飲んでいるほど、日々の生活に欠かせない食品です。
牛乳は毎日飲んでも問題ありません。しかし牛乳だけで生活するのはNG。牛乳にも足りない栄養があります。
今回は、牛乳に入っている栄養素や健康効果、さらに「背が伸びるの?」「太らないの?」などの疑問にも詳しく解説していきます。牛乳を飲むオススメのタイミングについてもお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。
牛乳だけで生活できるのか
栄養が豊富で健康にいいと言われる牛乳。しかし、毎日の食事を牛乳だけにするのはやめましょう。一時的には生活を維持することができますが、長い目で見ると栄養不足になることも。
牛乳は良質なたんぱく質やカルシウム・ビタミンB群などの栄養素を含んでいますが、他の重要な栄養素(炭水化物、他のビタミン、ミネラルなど)や食物繊維が十分に入っていません。これらの栄養素不足により免疫機能の低下が起きる可能性も。
牛乳に足りない栄養素は他の食材で補いながら、体に必要な栄養素をバランスよく摂取することが大切です。
牛乳は毎日飲んでいいのか
牛乳はもちろん毎日飲んでOK。良質なたんぱく質、カルシウム、ビタミンが入っているので毎日飲むことで健康にも良い効果がたくさん。毎日1日コップ1杯程度(200mL)以上の牛乳を飲むことで、身体活動量、骨強度や筋肉量の向上に有効との研究成果もあります。

ただし、飲みすぎると体質や体調によって、アレルギー反応や消化不良が起こる場合も。
毎日飲むのは問題ありませんが、日々の体調にあわせて量を調整し、飲み過ぎは控えましょう。
牛乳の栄養は完璧?
牛乳は体に良い栄養がたくさん入っていますが、その組成は完璧ではないため「準完全食」と呼ばれています。牛乳に入っている特徴的な栄養素と、不足している栄養素についてそれぞれ解説します。
タンパク質

牛乳好きには当たり前の話ですが、牛乳は質の高いタンパク質と呼ばれています。その理由は2つ。アミノ酸スコア100であること、ホエイとカゼインが入っているからです。
牛乳は、必須アミノ酸全8種類をバランスよく含んだアミノ酸スコア100の食品です。体内で消化・吸収されて、効率よくからだのタンパク質に合成されます。
〈必須アミノ酸、アミノ酸スコアとは?〉
必須アミノ酸は、タンパク質中に20種類ほどあるアミノ酸の中でも、からだの中では作れずに必ず食事からとる必要があるアミノ酸のこと。不足すると、体内のタンパク質合成や免疫機能の低下などが起こるほど、人には欠かせない栄養素。
アミノ酸スコアは、必須アミノ酸量をどの程度満たしているかの基準値。スコアが100に近いほど良質で理想的なタンパク質であることを示す。ほかのスコア100の食品として、卵、アジ、大豆などがある。
また、牛乳のタンパク質は主にホエイとカゼインの2つの主要なタンパク質で構成されています。
ホエイ | カゼイン | |
吸収速度 | 速い | 遅い |
主な働き | 筋肉の合成 | 持続的にアミノ酸を供給 |
ホエイは消化吸収が速く、筋肉合成に役立ちます。一方、カゼインは消化吸収が遅く、持続的にアミノ酸を供給する特徴があります。この組み合わせにより、牛乳はすばやく、持続的に筋肉合成と組織修復ができるのです。
乳脂肪
牛乳には、乳脂肪という乳製品に特有の脂質が入っています。乳脂肪分の役割はおおきく3つ。
- エネルギー源になる
- 脂溶性ビタミンの吸収を助ける
- 満足感をキープできる
乳脂肪分は、からだに必要なエネルギーを長時間にわたり供給できる栄養素。特に成長期の子どもやよく動く人にとって、乳脂肪分はエネルギーの補給源として大切です。
乳脂肪分には脂溶性ビタミン(A、D、E、K)が含まれます。乳脂肪分がこれらの体内での吸収をサポート。牛乳を飲むことで効率的に脂溶性ビタミンを取り込めます。
乳脂肪分は食事の満足感を高め、腹持ちをよくすることで、空腹のストレスを解消できます。脂肪は消化に時間がかかり胃の中に長くとどまるため、腹持ちがよい成分で食事の満足感をキープ!空腹による過食や間食をひかえ、ストレスの解消につながりますよ。
乳糖
乳糖は、乳製品に自然に存在する炭水化物のひとつです。
乳糖のおもな効果はこちら。
- エネルギー源となる
- 腸内環境を維持する
- 骨の健康に役立つ
体内で乳糖がグルコースとガラクトースに分解されることで、エネルギー源になります。特にグルコースはすばやくエネルギーに代わるので、運動やスポーツをする人のエネルギー補給に牛乳はオススメです。
また、乳糖は腸内の善玉菌(ビフィズス菌やラクトバチルスなど)のエサとなり、腸内環境のバランス維持に役立ちます。健康な腸内環境は、免疫機能アップや消化・吸収の改善につながりますよ。
乳糖はカルシウムの吸収を促す働きがあり、結果的に骨の健康をサポートしているのです。牛乳にはもともと骨の形成に必要なカルシウムがもともと豊富です。乳糖があることで、カルシウムをさらに体内への吸収をサポートします。
足りない栄養
牛乳は栄養が豊富な高い食品ですが、必要な量を満たしていない栄養素もあります。
牛乳に少ししか入っていない栄養素
- ビタミンC
- ビタミンE
- 鉄
- 食物繊維
ビタミンCとビタミンEは、免疫機能の維持や抗酸化作用に必要な栄養素。不足すると風邪を引きやすくなったり、細胞老化にもつながります。
鉄は血の素となり酸素を運ぶために不可欠な栄養素。女性や子どもはとくに貧血になりやすいので注意が必要です。最近では、牛乳だけ飲んでいる幼児が鉄欠乏症になった事例もあります。
食物繊維は腸の健康維持や消化促進に役立つ栄養素。不足すると便秘などの腸内環境の乱れの原因に。
牛乳だけで食事を済ませずに、これらの栄養素は他の食品から補うことで、栄養バランスの取れた健康的な食生活になりますよ。

給食で牛乳が採用される理由
給食にはどんなときも牛乳は必ずでてきますよね。牛乳が給食で出される理由は、成長期に必要なカルシウムや良質なタンパク質、ビタミンが入った食品だから。法律で給食に牛乳を採用するよう決められていません。
しかし、カルシウムは1日の摂取目安量の50%をとれるように「学校給食法」で定められています。牛乳ほどカルシウムを豊富に含む手軽な食品はないので、給食には牛乳が欠かせない存在になっているのです。

また、牛乳は不足しがちなタンパク質補給としても活躍しています。昔、日本人の主なタンパク質源は大豆や魚でしたが、その量は成長期の子どもには少なく慢性的なタンパク質不足でした。
そこで昭和21年に給食に採用されたのが脱脂粉乳です。昭和33年からは国産牛乳に代わり、今でも良質なタンパク質源として牛乳が採用され続けています。
牛乳の健康効果
牛乳は体に必要な栄養を補給することで、健康への効果もたくさんあります。
- 骨を作り、丈夫にする
- 歯を強くする
- 筋肉や細胞を元気にする
- 腸内環境を整える
牛乳に含まれるカルシウムが、骨と歯の健康をサポートします。体のカルシウムが不足すると骨からカルシウムが溶け出してしまいます。骨がもろくなり骨粗鬆症になることも。牛乳により骨の形成を保ち、さらに骨密度もアップして丈夫な骨をキープできます。

歯にもカルシウムが大切。とくに、子どもの成長期に牛乳を飲むことで歯がしっかり育ち、強い歯になります。また、牛乳は良質なタンパク質源。細胞や組織の成長・修復にとても重要な役割を担っています。牛乳を飲むことで細胞が元気に動き、筋肉の発達につながります。
さらに、牛乳に入っている乳糖が腸内の善玉菌を増やします。腸の動きが活発になることで便秘を防ぐ効果もありますよ。
牛乳で背が伸びるのは本当か
「大きくなりたいなら牛乳を飲みなさい」と言われたことはありませんか?実は、牛乳を飲んだからと言って直接的に身長が伸びるわけではありません。
ただし、健康な成長と発育に必要な栄養素(カルシウムとタンパク質)をとることで、身長を伸ばす助けになることも。カルシウムは骨の形成や成長に、タンパク質は細胞や組織の成長に必要な栄養素です。これらの栄養をとることで、背が伸びるのに必要な骨や筋肉の発育をサポートできます。
ただし、身長の伸びには他の要素も関係します。牛乳で成長に必要な栄養素をとる以外にも、睡眠・運動・ストレスの管理などもあわせて行いましょう。
牛乳を飲むと太るのか ダイエットにいいのか
牛乳は脂質が多いから太るイメージがあるかもしれませんが、牛乳を飲んで太ることはありません。牛乳のカロリーはコップ1杯(200ml)で121Kcalです。1日に必要なカロリーの数パーセントにしか満たないため、牛乳のせいで太ることはないでしょう。
牛乳は満腹感を得やすい食品で、空腹のストレスを抑えてくれる効果もあります。ダイエット中の方にもオススメですよ。
牛乳を飲むベストなタイミングはいつ?
一日の中で牛乳はいつ飲んでも構いません。しかし、牛乳を朝、昼の活動時、夜に飲む場合で、それぞれちがう効果が期待できます。
朝に牛乳を飲む場合
朝は、エネルギーと栄養摂取がメインになります。牛乳に含まれる乳糖や脂肪がエネルギー源となり、朝の活動や代謝をサポートします。朝は食が細めの方にオススメです。
また牛乳はタンパク質や脂肪が豊富なため、満腹感が得られやすい食品。食欲の抑制や間食の減少につながるのでダイエット中の方にピッタリです。
昼に牛乳を飲む場合
昼頃の活動時間帯に牛乳を飲むことで、水分・ミネラル補給ができます。ミネラル補給と言えば、スポーツドリンクのようなイメージがありますよね。
実は牛乳もミネラルが豊富で、スポーツドリンクよりも糖分が少なくヘルシーな飲み物。牛乳は日中に汗をかいて失われたミネラルと水分を補う運動後にオススメです。

夜に牛乳を飲む場合
夜寝る前に牛乳を飲むことで、リラックス効果と睡眠の質の向上が期待できます。 牛乳にはトリプトファンというアミノ酸が含まれています。トリプトファンは睡眠ホルモン(セロトニンとメラトニン)になる素の成分。
睡眠ホルモンにより副交感神経が活発になり、リラックスして深い眠りにつけるでしょう。また、牛乳に含まれるカルシウムもリラックス効果があるので眠りをサポートしてくれますよ。ご自身の生活スタイルや栄養ニーズに合わせて、牛乳を飲むタイミングをぜひ調整してみてください。
飲み続ける注意点
牛乳は、健康な方が毎日飲み続けても問題ありません。ただ、牛乳を飲むとお腹が張る、くだすなどの症状がでる方は「乳糖不耐症」かもしれません。牛乳を飲み続けるのは控えましょう。
乳糖不耐症とは、牛乳にふくまれる乳糖を分解する酵素がうまく働かず、乳糖を消化することができないこと。消化できずに乳糖がお腹の中にたまることで、腹部の不快感、下痢などの症状があらわれます。
しかし乳糖不耐症以外の方は、乳糖をちゃんと消化できるので、このような症状が出ることはありません。毎日飲み続けても全く問題ありませんよ。
牛乳と合わせて食べたい食品紹介
牛乳は準完全食と呼ばれますが、ビタミンC、ビタミンE、鉄、食物繊維など足りない栄養素もあります。これらの栄養素を補う食品をとりいれてバランスの良い食事を心がけましょう。

特に、ビタミンC・ビタミンE源として蒸しブロッコリーと、鉄・食物繊維が豊富なドライプルーンをあわせた食事がオススメ。ビタミンCは鉄の吸収率もあげてくれるので一緒にとることで効率よく摂取できますよ。でも、いろんな食材を用意して調理するのは時間がなくてできない方もいますよね。
そんな忙しい方にオススメなのは完全栄養食。
これは、1日に必要な栄養素(必須栄養素)を過不足なく含んだ完璧な食品です。牛乳よりも日持ちがする食品ばかりなので、保存方法・保存期間を気にせずに手軽に食べられます。日々の食事に完全食を取り入れて栄養不足を気にしない食生活を送りましょう。
完全栄養食(完全食)について、詳しくこちら